自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

自衛隊の飯①日常編

 

「自衛隊では飯を食った数で偉さが決まる」

 

 そう語ったのは私が部隊に配置された時の営内班長でした。換言すると、自衛隊は階級社会ではあるものの一般の会社や公務員のように年功序列の風潮が根強い、ということになります。それを「飯を食った数」で言い表しているところに自衛隊らしさが出ていますが、振り返れば、自衛隊生活は飯に始まり、飯に終わると言えるかもしれません。私は2年間を営内で過ごし、その分の飯を食ってきましたが、いろいろと思い出すことがあります。今回はその中でも①日常編として、駐屯地の食堂でのことを中心に書きたいと思います。

 

 

自衛官の食事内容

 

 営内に居住する自衛官であれば、朝・昼・夕と13食を食堂で摂ります。これは新隊員であれ、ベテランの陸曹であれ同様です(ちなみに幹部は営内に居住することはできません)。気になる食事内容ですが、基本的には1割程度の麦飯が入った白米を中心に、肉もしくは魚を使用した主菜、それに味噌汁と副菜が1~2品ほど付く、極めて日本的なものです。ちなみに私が自衛隊生活の大半を過ごした某駐屯地の管理栄養士の方によると、陸上自衛隊では肉よりも魚の方が献立に多く使用されているようです。週に何回かはうどんやスパゲッティなどの麺類が登場し、この日はご飯派ではない営内者のテンションが上がります。そして私が自衛隊生活を送った2つの駐屯地では、毎週金曜日の昼がカレーライスでした。金曜日のカレーは海上自衛隊だけかと思いきや、陸上で生活する私たちも一緒の食事を摂ることに妙な一体感を覚えたものです。ちなみに私の知る限りカレーライスが嫌いな日本人はプロ野球の元巨人・元木大介氏くらいなので、この日は誰もが昼食を楽しみにしていました。もちろん週末休暇直前ということもありますが。

 

 

「いただきます」と「ごちそうさまでした」

 

 漫画『ライジングサン』には、自衛官候補生たちが牛丼屋で食事をする際、大きな声で「いただきます!」と言っている姿が描かれていました。それにつられて食事を終えたばかりの一般のお客さんも小さく「ごちそうさま」と言っており、なんだかほっこりするシーンでした。

 

 駐屯地の食堂において、新隊員及び陸曹候補生は各班でまとまって食事を摂ります。全員がテーブルに着いたところで、班員の一人が「姿勢を正して!」と音頭を取り、その後全員で「いただきます!!」と食堂中に響き渡るほど大きな声を出します。一般の隊員も何人かのグループでまとまって食事をとりますが、大きな声でないにしても決まって「いただきます」と「ごちそうさまでした」は言っていました。やはり皆、教育隊にいた頃の習慣が抜けないのでしょう。しかしもっと言えば小学校や中学校でも給食の時には必ず「いただきます」と「ごちそうさまでした」は言っていた覚えがあります。高校や大学、ましてや社会人になると一人で食事をとることが増え、さらに仕事をするとなるとこのようなことにまで気を配っていられないのかもしれません。

 

 話は脱線しますが、この「いただきます」という言葉には食べ物そのもに対するものと、それに関わった人に対する2つの感謝の意味が込められています。そして日本の食文化では箸は必ず横に置きます。これは神聖な食べ物と汚れた人間の世界を分かつ境界線を意味しており、「いただきます」と手をあわせるのはその境界線を越える儀式であるというのです。韓国や中国でも箸を使う文化はありますが、箸は垂直に置かれています。

 

 

We are what we eat.

 

 日本語に訳すと、私たちの体は、私たちが食べたものでできている、という意味になります。このフレーズを調べたらどうやらアメリカのことわざらしいので英文で記しましたが、とても彼らが作り出した言葉とは思えませんね(笑)。それはさておき、感覚的にも論理的にもこの言葉はその通りだという印象です。

 

 私が自衛隊に入る前に都内でサラリーマンをしていたことは既に何度か述べましたが、入隊してからゴールデンウィークまでの期間で3キロほど体重が増加しました。サラリーマン時代は勤務の大半を椅子に座って過ごしていたのと対照に、自衛官候補生過程ではアスリート並みにカロリーを消費します。それでもなぜ体重が増えたかというと、やはり食事と運動だと私は思います。駐屯地の食堂メニューを毎回食べれば訓練に必要なカロリーは十分に摂取できますし、訓練の中で行われる腕立て伏せをはじめとした体力錬成は筋肉を肥大化させます。

 

*ちなみに戦闘訓練が始まってからは再び体重が減少に転じました。理由はお察しください。

 

 

 体が資本とはよく言ったものですが、これはまさに自衛官のための言葉と言っても過言ではないでしょう。事実、栄養バランスに気を使う隊員は多く見られましたし、プロテインやサプリメントを摂取するものも珍しくありません。自衛隊は健康な体でないと務まらない職業だと私は思います。そして有事の際に即応できるために、営内に居住する者には3度の食事が与えられているのだと思います。

 

 

 

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*当ブログでもし自衛隊の秘密事項に関する記述がありましたらご連絡ください。早急に削除いたします。  


 

銃剣道とは

皆さんは銃剣道という競技を聞いたことはありますか?

 

剣道ではなく、「銃」剣道です。

 

 私は自衛隊に入る前にメジャー、マイナー含め4つほどのスポーツを部活動等で本格的に取り組み、学校の体育でもそれなりの数の競技を経験してきました。しかしこの銃剣道というものは名前すら聞いたことがありませんでした。後になって先輩に話を聞くと、競技者の大半が自衛官またはそのお子さんのようです。国民体育大会の競技にも入っているようなのですが、平成34年度までは毎年ではなく隔年開催という微妙な立ち位置です。

 

銃剣道とは

公益社団法人全日本銃剣道連盟のホームページを参照しつつ、私なりに説明したいと思います。

 

 銃剣道は一見すると剣道と非常に近しい競技に思えます。事実、競技で使用する袴は剣道のものと全く同じですし、剣道が竹でできた竹刀を使うように、銃剣道では木でできた木銃を使います。銃剣道の歴史は明治建軍の時代まで遡ります。当時の日本は近代化に向かう真っ最中で、軍隊はフランスの軍制を参考にしました。これ以降、日本に古くから伝わる銃剣術に取って代わり、フランス式の剣術教育が陸軍で行われるようになりました。しかしフランスから伝わった銃剣術はスポーツ的要素が強すぎるとのことで1890年にはフランス式を廃止し、日本式の銃剣術が復活しました。以来、この銃剣術は軍隊の正式科目として取り入れられ、技の研究や競技大会が行われるようになりました。そして1941年に大日本銃剣道振興会が設立され、銃剣道という名称が定着したようです。

 

続いて競技内容ですが、これは百聞は一見に如かず、ということで下記の動画をご覧いただきたいと思います。

 

www.youtube.com

 

 

 試合開始直後の「初一本」で勝負が決まってしまうこともありますが、大抵は相手との間合いや剣の出し方などを探り合い、その一瞬の隙を突いて1本を取るシーンが多いです。これは柔道において、相手とがっちり組み合いながらもお互い相手の隙を突いて技を掛け合う様子に似ています。そして銃剣道において一瞬にして勝敗を決する「1本」ですが、全日本銃剣道連盟のHPによると、

 

  • 左腕の上から左胸を突いた場合の「上胴(うわどう)」

  • 左腕の下から左胸を突いた場合の「下胴(したどう)」

  • 喉を突いた場合の「のど」

  • 相手が左胸を左腕で隠した時に小手を突いた場合の「小手(こて)」

  • 相手が体勢を崩した場合に相手の左胸に向かって垂直に左肩を突いた場合の「肩(かた)」

 

正しい姿勢で突いた時に1本となるようです。 

 

 私は上官から「心」「技」「体」すべてが揃っていないと一本は取れない、と教えられました。すなわち、

 

心=声で相手を圧倒し

技=剣を相手に刺してから抜くまでの動作を

体=正しい姿勢で行うこと

 

 

が銃剣道における一本の条件なのだと。

 

 

 ちなみに相手を突いた剣を抜く動作は、「残心」と呼ばれ、銃剣道に限らず日本の武道・芸道で一般的に使われる言葉です。この残心が出来ていないと1本と認められないくらい、銃剣道ひいては武道では大切な動作です。残心は、技を決めた後も油断しないこと、相手を敬うこと、余韻を残す美学等の表れであり、そこには日本独自の文化も感じることができます。もし明治の頃に導入したフランス式銃剣術が日本に定着していたとしたら、銃剣道における残心はなくなっていたかもしれません。

 

 

 以上、大まかに説明してきましたが、私なりに銃剣道という競技を一言で説明するならば、相手の心臓を一突きにすること、であると私は思います。もともと銃剣道は軍隊で発展し、兵士教育の一環として取り入れられてきた歴史があります。当時の戦争中における兵士の役割は、目の前の相手を殺すことに他なりません。私も非常に短い期間ではありましたが、銃剣道という競技に取り組み、試合も経験しました。そこでは、相手を倒す(=相手を殺す)ための最善の方法は、相手の剣を恐れずに懐に飛び込んでいくことである、ということを学びました。

 

修業としての銃剣道

 剣道や柔道といった、日本古来の武道をやったことがある人なら経験があるかもしれませんが、この銃剣道も練習ではただひたすら同じことを繰り返します。木銃の持ち方、構え方に始まり、足さばきや剣の出し方などを何時間でも繰り返します。私も含め、多くの新隊員がこの銃剣道という競技に初めて取り組むわけですが、当然毎日が同じことの繰り返しで飽きてしまいます。私は自衛隊に入る前にサラリーマンを経験していましたので、棒を振ってるだけで給料がもらえるなんて最高だな、と思ったりもしていました。しかしどうせやるからには少しでも上手になりたいと思ったのも事実で、課業外に素振りや構えのチェックをしていました。

 

 数週間から数カ月に及ぶ銃剣道練成ですが、新隊員の中には「何かを掴んだ」者も出てきます。これはなかなか表現するのが難しいのですが、木銃が完全に自分のものになっていて、フォームが安定してきた、と言うことができると思います。ちなみにこれは何回素振りをすればこうなる、とは一概に言えず、ひたすら繰り返していたらいつの間にかこうなっていた、という感覚だと思います。例えるならば外から中が見えないコップにゆっくりと水を注いでいき、何秒後かに水がコップからワッと溢れ出てくるようなものでしょうか。別の競技でいうと、野球をやったことがある人ならば、ある日を境にバッティングフォームが全く崩れなくなったでしょうし、サッカーならばシュートをふかすことが激減したでしょう。これらは厳密には同じ動作を繰り返すことで筋肉や認知能力が最適化された、と言うことが出来るのでしょうが、残念ながら数値化や見える化ができません。しかし少しずつこの最適状態に近づいていっていることだけは確かなのです。

 

 

 今回紹介した銃剣道に限らず、自衛隊の訓練・演習は同じことの繰り返しです。しかしこの繰り返しこそが、普通の人がとてつもない所まで到達できる唯一の手段なのだと思います。これを読んでいる新隊員の人は、部隊に配置されてすぐ銃剣道錬成が始まると思います。しかしどうか腐らずに錬成に取り組み、自分がどのように変化するかを楽しんで欲しいのです。もちろん大会での勝利を目標にするのも良いでしょう。

 

 

 日本古来の武道に基づく礼儀・作法と、近代陸軍の中で発展してきた技。 銃剣道はこの2つを同時に学ぶことができるという点で、自衛官を自衛官たらしめるある種の修業だと私は思うのです。

 

 

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自衛隊の風呂

 陸上自衛隊の駐屯地には新隊員や若年隊員を中心に、多くの隊員が生活をしています。そのため、駐屯地内には課業外の時間を過ごす「生活隊舎」と呼ばれる建物や、食堂や浴場といった施設が完備されています。どれも一般の人には興味深いと思いますが、今日はお風呂事情について書きたいと思います。

  

 新隊員にとってお風呂は憩いの場

 

 これまでにも度々書いている通り、入隊してすぐの前期教育期間中は、まさに分刻みのスケジュールです。どこの教育隊でも、68人が1つの営内班として編成され、各班には班長として若手陸曹(20代中盤~30歳前後の3等陸曹が中心)が、班付として営内に居住している陸士長(3年目以降の隊員)がそれぞれ配置され、新隊員の一挙手一投足に目を光らせます。そんな厳しい前期教育にあって、浴場は班長・班付の目が届かない数少ない場所の1つです。私が受けた教育隊の場合、浴場の混雑を避けるために新隊員がお風呂に入って良い時間が決められていました。その時間を守るためには、服を脱ぐ→体を洗う→湯船につかる→体を拭く→服を着る、という一連の動作を概ね1520分で済ませなければなりません。普通の生活からすると「短い!」と思われるかもしれませんが、私は「今日も1日終わったなぁ」と皆で笑いあったりしていました。前期の同期と会うと、この時間が教育隊で一番好きだった、と語る隊員は多いです。思い返せば色々な同期がいました。筋肉の発達具合を自慢する者、男の逸物を見せつける者、あるいはそれを頑なに隠す者。日本には「裸の付き合い」という言葉があるほどで、ここでの様々なコミュニケーションが営内班や区隊の団結を強めていたと思います。それは部隊に行ってもそうでしょうし、陸曹を目指す者ならば避けては通れない「陸曹教育隊」でも同じはずです。

 

*某駐屯地にて陸曹教育隊を通年間近で見ていた私からは、陸曹教育隊では湯船に浸かる時間すらない、ということだけここではお伝えしておきます。

 

一般隊員は風呂が嫌い?

 

 欧米では日常的に湯船にゆっくりと浸かる慣習はありませんし、何より他人の前で全裸になるということに大きな抵抗があるでしょう。かくいう私も部隊での生活に慣れ始めると、生活隊舎にあるシャワーで済ませるようになりました。理由は幾つかあり、その最たるものは「湯船のお湯が汚い」ということです。上述した通り、駐屯地の浴場は日中泥だらけになって訓練をする新隊員を始め、数百人近い隊員が使用します。もちろん湯船に浸かる前は体を洗うのですが、やはりこれだけの人数がいると湯船のお湯が汚くならないわけがありません。さらに脱衣所の床も濡れていたり、どこから抜け落ちたか分からない体毛が散乱していたり、目を覆いたくなる光景が広がっています。私も幾度か経験した「浴場当番」という係が毎日浴場を清掃するのですが、一度この係を経験した隊員はやはり駐屯地の浴場を使用したがらないと思います。

 

自己内省の場としての風呂

 

 しかし冬場になるとどうしても体の芯から温まりたくなるもので、私も再び駐屯地の浴場を利用するようになりました。そこでは仲の良い隊員同士で浴場に行き、風呂上りにジュースやアイスを楽しむ、といったどこか懐かしい姿を目にしました。このような光景を「微笑ましい」と見るか、「仕事が終わってもプライベートが無い」と見るか。

 

あなたはどちらでしょうか?

 

 駐屯地の浴場に行くようになって気づいたことがあります。それは浴場が閉まりかかる時間を見計らい、あえて一人の時間を浴場で過ごす隊員が少なからずいたことです。ある日、同じ部隊に所属していた同期(当時20歳)が大浴場で一人、湯船に浸かりながら思い耽っている姿を目にしました。中隊であまり目立つ方ではない彼は、小隊では「自分は首から下の人間」と体力しか取り柄がないことを自嘲していました。事実、彼は訓練の時には同期の中で一番「使える」と評され、先輩から可愛がられるタイプでもありました。私と彼は区隊は違うものの前期教育を共にした仲であり、後期教育ではベッドバディを組んだ間柄でした。

 

 そんな彼があの時何を考えていたかはわかりません。私に度々相談していた「自衛隊を続けるか否か」という事だったのかも知れません。仕事とプライベートがほとんど同一である自衛隊という環境にあって、「一人の時間」というのは本当に貴重です。自分から意図的に作り出さなければ存在しない、と言い切っても良いかもしれません。裏を返せばそれだけ人と人との関わり合いが多い、かつ濃密であり、コミュニケーション能力が求められるという事でもあります。自衛隊は肉体労働と思っている方が多いと思いますが、これは事実の一部でしかありません。私が1任期=2年間の自衛隊生活で思ったことは、自衛隊は感情労働である、ということです。詳しくはまた別の機会に書きたいと思います。

 

 私も彼に見倣い、人数の少ない駐屯地の浴場を自己内省の場として利用し始めました。今日はどんな1日であったか。自分は将来何がしたいのか。欧米社会では教会での懺悔が自己内省の場として知られていますが、日本には湯船に浸かる、という素晴らしい日常文化があります。そしてこれは心身の疲れを癒すというだけでなく、今日1日を振り返り、明日をどう生きるかという自己内省の場にもなると思うのです。

 

 私は自衛隊に入る前、会社員として都内で一人暮らしをしていました。間取り1Kの安アパートには湯船もしっかりと付いていたのですが、結局使用したことは一度もありませんでした。一人暮らしだと湯船に張るお湯がもったいないということもありますが、何より当時の私には湯船に浸かる程の精神的なゆとりがなかった、というのが正直なところです。しかし自衛隊での生活を経て、三十路が遠目に見える歳になり、最近は温泉旅館やスーパー銭湯で休日をゆっくり過ごすことの良さが分かるようになってきました。欧米人が夏になるとビーチに行き、かといって何をするわけでもなく、ただただゆっくり過ごすことに私たち日本人は疑問を抱きがちですが、日本でもスーパー銭湯に行けば同じような光景を見ることが出来ます。(ビーチと屋内、長期と1日限りという違いはありますが)

 

 余暇をどう過ごすかは私が常々考えていることですが、連続した休暇を取りづらい日本では、湯船に浸かることは数少ない欧米的な余暇の過ごし方*ではないかと思っています。一日中だらーっとし、生産的なことは何もしていないように見えて、実は思考の整理や今後の人生について考えている。そんなある意味「贅沢な」時間の過ごし方があっても良いのかもしれません。

 

*休暇を過ごす滞在先で何を楽しみにしているのか、との調査にバカンス好きのフランス人は「何もしない」「読書」と回答したそうです。

 

 

最近湯船に浸かっていない方、たまには近所の銭湯にでも行ってゆっくりしてみるのはいかがでしょうか?(のぼせ・湯あたりにはご注意ください。)

 

 

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防水処置

今日のテーマはもしかしたら私が自衛隊生活で学んだ最も大切なことの1つかもしれません。

 

そしてその「学び」を疎かにしてしまったが為に、私は自衛隊を退職してからわずか2週間後に、約10万円の損失をしてしまいました。

 

現職の方もそうでない方も、どうか私のようにはならないでください。

 

 

陸上自衛隊の特性

陸上自衛隊を象徴する言葉は数多くありますが、その中でも今日のテーマに関するものとして、以下の2つを紹介したいと思います。

 

陸上自衛隊は人に金をかける

陸上自衛隊は全天候型である

 

 

海上及び航空自衛隊は装備に多額のお金をかけていて、その装備の優劣がそのまま戦力に直結します。一方の陸上自衛隊は、もちろん戦車や大砲といったものにお金をかけますが、何よりも「人」にお金をかけるのだと教えられました。防衛省・自衛隊のHPにもある通り、陸上自衛隊の人員は、海上・航空自衛隊に比べ3倍以上であり、駐屯地も全国津々浦々に所在しています。地震大国・日本ではいつどこで自然災害が起こってもおかしくはありません。その時のために、そして有事の際の最後の砦として陸上自衛隊は存在するのだと、私は教えられました。

 

入隊してすぐの前期教育では、陸上自衛官として最低限必要なことを学びました。そして部隊に配属されてからは演習場での訓練を経験する中で、準備こそが全てであるということを痛感させられました。

 

平時において、陸上自衛隊の主な仕事はもちろん訓練です。訓練にも色々と種類があるのですが、演習場にて行う訓練では駐屯地を出発する前に服装、武器、個人装備、一般状況(今回はどういうシミュレーションで訓練をするか、ということ)、命令の内容等を確認します。演習場に着いて、「状況開始」になってからは、売店や自販機は使えません。あくまで戦争中なのですから…。

 

そしてよっぽどのことがない限り、訓練は「状況終了」まで続きます。訓練期間中の天気予報は入念にチェックしますが、得てして演習場の天気は変わりやすいので、どんな天候状態になっても良いように準備するのが一流の陸上自衛官です。それは熱中症対策や防寒対策であり、以下に紹介する防水処置なのです。

 

 

防水処置とは

いわゆる防水対策のことです。こういった自衛隊独特の言葉が数多くあるので、どこかで一度まとめてみたいと思います。

 

陸上自衛隊の防水処置はあらゆるものに適用されますが、陸上自衛官が共通して行うものとしては以下のものが一般的かと思います。

 

トイレットペーパー

メモ帳(防水のメモ帳も自衛隊の売店に売っている)

着替え

食糧・食器(野外炊事する時)

スマホ(訓練中の使用はもちろんNGです)

 

多くの陸上自衛官が使うのが、主に食品を保存するジップロック®でして、訓練前になると駐屯地の売店や近所のスーパーではこの商品が飛ぶように売れます。他社の類似品でも良いのですが、袋の丈夫さと開け閉めのしやすさから、やはりジップロック®、それもフリーザーパックが良いでしょう。もしこれに入りきらないものであれば、45Lの透明なポリ袋を使うのが一般的です。

 

 

ジップロック®最強説

冒頭で約10万円の損失をした、と書きましたが、勘の良い方ならお分かりの通りiPhoneを水没させてしまいました。4月下旬に韓国を後にし、台湾旅行最終日に九份という人気の観光地に行った時のことです。この九份という場所が台湾北部の山あいに位置し、天気が変わりやすいことは承知していました。しかしたとえ雨が降ったとしても、マウンテンパーカーの胸ポケットに放り込んでおけば問題ない、とGORE-TEX®の防水機能を過信していました。リュックの中には日本から持ってきたジップロック®が数十枚も入っているにも関わらず…。

 

GORE-TEX®を貶めるわけではありませんが、どうやらこの素材は雨は通さないようなのですが、透湿性はあるみたいです。つまり私の場合雨による水没ではなく、九份を歩き回り、突然の雨にあたふたした私から発せられた蒸気(湿り気)にやられたということです。

 

iPhoneのほぼ唯一にして最大の弱点である水没。日本ではスマホユーザーの70%近くがiPhoneを使用しているようですが、必ず小さいジップロック®を携帯するよう、私は伝えたいです。折りたためば財布や定期入れにもたやすく入るでしょうし、旭化成オームプロダクツ社及び製造元のSC Johnson社には是非、iPhone専用ジップロック®の開発を検討していただきたいです。

 

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自衛隊は何を守っているのか

久しぶりの更新になります。

 

私事ですが4月下旬に韓国、台湾、フィリピンを旅行しました。主に王道観光地を見て回ったのですが、韓国の戦争記念館、台湾の中正紀念堂、フィリピンのリサール公園で各国の現役兵士を目の当たりにし、ふと「自衛隊は何を守っているのだろうか」と疑問に思ったのがこの記事を書こうと思ったきっかけです。

 

私は「軍隊はその国の最も大切な人、ものを守っている」という認識でいますが、上記の問いに対して「我が国の平和と独立」という完璧な答えを出せる人は防衛省関係者だけでしょう。日本は今日現在、戦争や軍事的緊張下にはありませんが、幾度となく日本を襲った自然災害での自衛隊の救助活動を目にする度に、「自衛隊は日本を守っている」と考える人は多いでしょう。また、皇族や内閣総理大臣が海外へ渡航する場合、日本国政府専用機が使用されます。これは防衛省航空自衛隊が管轄しているので、やはり「大切な人」を守っていることに違いはないでしょう。

 

しかし実際に天皇陛下(皇居)を警護しているのは、皇宮警察本部(皇宮警護官)という警察庁の管轄組織で、防衛省・自衛隊とは関係ないようです。私は彼らを実際に見たことはありませんが、YouTubeに動画がありましたので、興味がある方は見てみてください。

 

Changing of the Guard, Cambio de Guardia, Tokyo, Japan 皇居 衛兵交代式, 衛兵交接 - YouTube

 

ちなみに今回訪問した3カ国は全て共和制国家なので、特定の一族を守るということはありません。欧州の王制国家ではどこの組織が彼らを守っているのか、今後調べてみたいと思います。

 

 

徴兵という義務

韓国は日本人にとって最も親しみのある国の1つではないでしょうか。似たような顔立ちに加え、生活習慣や食文化、音楽シーンも日本と限りなく近いと言えるでしょう。私は今回初めて韓国を訪問しましたが、「ソウルは東京と同じ感じだろうなぁ」というのが到着前の率直な感想です。実際にソウル市内は公共交通機関もよく発達しており、物価といい街並みといい本当に東京そっくりだと思いました。街中で迷彩服姿の兵士をみるまでは…。

 

韓国は多くの方が知っているように現在も徴兵制を敷いています。もちろん私も知っていましたが、まさか駅構内や電車の中、弘大(ホンデ)という日本でいう渋谷・原宿のような場所にまで迷彩服を着た現役兵士を目にするとは思いませんでした。彼らは迷彩服姿のまま飲食店で仲間と過ごしたり、彼女と思われる女性とデートをしたりしていました。はじめは久しぶりに見る迷彩服にある種の興奮を覚えつつも、「これが韓国か」と深く考えさせられたのも事実です。

 

たまたま韓国という、日本の隣の国に男性として生まれただけで、約2年という人生の貴重な時間を軍隊で過ごさなければならない彼らの宿命。ソウルにある戦争記念館を訪れた際、ガイドの人がこう説明していたのが印象的です。

 

「徴兵を終えないと大企業や公務員の試験を受けられない」

「なるべく早く徴兵を終えたいが、軍の受け入れ人数の制限がある為に入隊浪人をする人もいる」

 

日本人にはにわかには信じられない話ですが、この時これが韓国の現実なのだと悟りました。日本以上の超学歴&格差社会を前に、韓国の男性は徴兵という試練をも超えなければならないのです。

 

韓国の徴兵制については下記サイトが詳しいです。

徴兵制~韓国の軍隊制度 | 韓国の軍隊 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」

 

 

続いて台湾はどうでしょうか。

 

台湾(正式名称:中華民国)は、日本の南西に位置する島国で、1949年に中国国民党の蒋介石が実効支配を開始してから現在の統治体制が続いています。第2次世界大戦後の中国国共内戦の末に中華人民共和国と分離してできた国であるため、現在でも台湾を正式な国家として承認している国は22カ国に過ぎません。(日本は国家承認をしていないが、国家と同等の扱いをしている)

 

台湾は徴兵制を敷いていましたが、近年はその見直しが進んでいるようです。下記サイトによると現在男性は1年間の兵役が義務付けられていますが、今後は4ヶ月の奉仕活動をもって兵役に替えることができるようです。

 

「台湾、徴兵制度廃止へ秒読み」2015.03.17 ( アジア情勢 ) - まこも日誌☆見出しで読み解く台湾 - Yahoo!ブログ

 

 

韓国、台湾、フィリピンが守りたいもの

韓国では毎週金曜日に戦争記念館で行われる国軍儀仗パレードに参加する姿を、台湾とフィリピンでは施設の警護にあたっている兵士の姿を目にしました。彼らは軍人特有の精悍な顔つきをしており、まさに国を守っているという感じがしました。

 

北緯38度線の北朝鮮との国境沿いにはとてつもなく大きな韓国の国旗が掲げられており(北朝鮮側も同様)、その最前線である板門店を警備する国連軍(計600名のうち500名は韓国人との情報)には容姿端麗、語学堪能なエリート韓国軍兵士が派遣されると聞きました。彼らの中には帰国子女も多く含まれており、北朝鮮との差を見せつけているのだいいます。

 

戦争記念館には古代朝鮮からの戦争の歴史が展示されていました。どの時代も興味深かったのですが、ある時代がぽっかりと抜けていることに気づきました。日本統治時代の1910年から1945年です。それ以後は朝鮮戦争の記録や近年の国連軍への参加などであり、日本人としては何とも複雑な気持ちになりました。

 

台湾の中正紀念堂には蒋介石の巨大な銅像があり、その前に二人の兵士が立っていました。色々と意見はあると思いますが、蒋介石が現在の台湾の礎を築いたことは間違いないでしょうし、軍隊が守るだけの価値があるというメッセージを私は感じました。中国との関係が今後どうなるのかはわかりません。しかし台湾政府が何を大切にしているのかは、もしかしたらこの辺りから見えてくるのかもしれません。

 

フィリピンではマニラにあるリサール公園を訪れました。この公園の名前にもなっているホセ・リサールという人物はフィリピンの国民的英雄として有名で、彼の実績はWikipediaをご覧いただければお分かりになると思います。ここマニラの銅像だけでなく、彼の留学などで所縁のある地には、現在記念碑が建てられているそうです。(日本は東京都日比谷公園)

 

そのリサール公園の東側には、これまたフィリピンの英雄ラプ=ラプの巨大な銅像があります。16世紀にスペインのマゼランがセブ島に到着した際、ラプ=ラプはキリスト教への改宗を拒否し(彼はイスラム教徒だった)、のちにマクタン島の戦いでマゼラン軍を打ち破りました。世界史を1年しか勉強しなかった私は、この2人については全く知りませんでした。しかしこの地を訪れた私は、この2つの銅像が一直線に立ち並び、フィリピン軍兵士に守られているリサール像とその奥に立つラプ=ラプ像がマニラ湾を睨み付けていることに気付きました。フィリピンについて私は詳しくはありませんが、この2つの銅像を調べるだけで、この国の歴史をざっくりとですが知ることができました。

 

 

 

自衛隊が守りたいものとは

ここまで滞在記のような形で記してきましたが、この3カ国に共通して言えることが1つだけあります。それは街中で見る国旗の多さです。たまたま私が国立の施設や博物館を訪れた回数が多かったからかもしれませんが、ちょっと大きめのオフィスビルの前には必ず国旗が掲げられていましたし、繁華街でも自然な形で国旗が飾られていました。フィリピンでは大統領選の真っ只中ということもあり、街の至る所で国旗を目にしました。もしこれが日本であったら、と想像すると、ちょっと怖いかもしれません。なぜなら日本では選挙であっても国旗を掲げるような候補者は見たことがありませんし、街中で日の丸を見ることもほぼありませんから。むしろ日の丸=右翼、ナショナリストと結びつけられるのが最近の潮流なのかもしれません。

 

 

自衛隊は何を守っているのか。

 

この問いを考えるにあたり、三島由紀夫の檄文に興味深い文言を見つけたので紹介します。

 

国体を守るのは軍隊であり、政体を守るのは警察である

 

 

自衛隊が軍隊なのかそうでないのかの議論はさておき、自衛隊が武力集団であることは間違いないので、ここでは「自衛隊が国体を守る」と解釈します。しかし三島はこうも述べています。

 

法理論的には、自衛隊は違憲であることは明白

 

集団的自衛権の行使が合憲か違憲かで揉めていますが、三島は「この時」が来るのを予見したかのように、46年前に檄文を記し、あのような行動に出たのかもしれません。

 

 

自衛隊は何を守っているのか。

 

 

この問いについては、もう少し日本のことを知る必要がありそうです。

 

 

 

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徴兵制について

最近、自衛隊のある募集チラシに対して、「経済的徴兵だ!」と声を上げている人がいます。このことをタイトルにした書籍も出版されているくらいですから、もしかしたら皆さんも聞いたことがあるかもしれません。現在、日本は徴兵制を敷いていませんが、今後も絶対ないとは言い切れません。国際情勢は常に変化するものですし、日本のように資源がない小さな島国は、大国の力関係に影響を受けざるを得ないからです。

 

今日は各国の徴兵制度を紹介しつつ、日本における徴兵制について考えてみたいと思います。

 

今なお徴兵制が行なわれている国々

2つの世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、そして冷戦。20世紀はまさに戦争の世紀と言えるでしょう。21世紀に入ると冷戦のほとぼりも冷め、フランスやドイツなど多くの国で徴兵制が廃止されました。では今なお徴兵制が敷かれている国はどこでしょうか?

 

代表的なところだと、日本のお隣朝鮮半島。韓国北朝鮮はまだ「休戦中」の状態であり、北緯38度の軍事境界線では南北のにらみ合いが続いています。韓流スターが韓国軍に入隊する時には日本でも報道されたりするので、割と有名だと思います。あとはヨーロッパだとスイス、オーストリア、ノルウェー、フィンランド、ウクライナ。この国々はヨーロッパの中央から北部に位置し、歴史的にドイツやロシアなどの国からの侵略を受けています。そのロシア中国といった大国、さらには台湾もと、日本の周辺国にはやたらと徴兵制実施国が多いようです。

 

ザックリまとめると、今まさに緊張状態にある国過去に侵略されたことのある小国で、現在も徴兵制が残っているようです。

 

 

徴兵制の意義

徴兵制に対しては様々な意見があります。先ほど紹介したスイスでは、外敵からの侵略可能性の低下と兵器の近代化を根拠に、徴兵制の廃止を問う国民投票が2回行われましたが2回とも否決されています。徴兵制支持を主張する意見を見ると、経済的効果や軍事的効率性を求める志願制(=職業軍人化)にすると、スイスのNATO加入(=永世中立国の破棄)につながるという政治的なものもが目を引きます。今は他国の脅威はなくとも、何かあった時には国民皆兵を敷き、国を守り抜くという考えが広く受け入れられているのでしょう。

参考:2013年、スイス国民はなぜ徴兵制の存続を決めたのか?: 極東ブログ

 

 

シンガポールの場合はどうでしょうか。マレー半島の最南端に位置し、国土面積は東京23区ほどしかないこの小さな都市国家も実は徴兵制を敷いています。近年、圧倒的な経済成長を見せていて、一見他国からの軍事的脅威からは無縁と思われがちですが、なにぶん小さな国ですので、常に他国からの侵略には備えているようです。シンガポールの徴兵制について調べるうちに、興味深い意見を見つけましたのでリンクを貼っておきます。

参考:絶頂期にあって苦悩するシンガポール 30年でGDP13倍!しかし国民の結束意識が懸念 ts

 

国家を形成する「個人」を、軍隊で鍛えようとしているのですね。記事の中にもある通り、富裕層の子息から貧困層出身者まで、軍隊では様々な階層の男子が共同生活と訓練を行います。自らを鍛え、視野を広げるという点では、シンガポールの徴兵制は国防以外の面でも大いに効果を発揮しているのではないでしょうか。

 

 

日本における徴兵制 

 

ここまで海外の例を紹介してきましたが、いよいよ日本について考えてみます。まずはその前提となる日本の安全保障環境。これは防衛白書にも明記されている通り、日米安全保障条約を基軸としていて、沖縄県を中心に国内にいくつもの米軍基地が存在しています。また、日本国憲法では軍隊の不保持を謳っていますが、日本には陸・海・空それぞれに自衛隊が存在します。海外メディアで自衛隊が紹介される時にはJapan Armyと言った記述が一般ですので、諸外国からは軍隊という認識なのでしょう。また、日本が戦争に巻き込まれないための「抑止力」という観点では、世界最大の軍事力を誇る米軍基地が日本にいくつも存在し、「アメリカの核の傘」の下にあることを理解する必要があります。

 

それらを踏まえて、日本に今、徴兵制が必要かと問われたらそれはノーということになるでしょう。

 

日本に対しては中国漁船によるによる挑発的行為もありますが、艦隊や戦闘機による直接的なものではありません。YouTubeへの動画投稿が話題となったように漁船に扮してのものが多く、防衛省・自衛隊でもこれらグレーゾン事態への対処には法整備をしています。そして何より世界第2位と第3位の国が全面的に戦争をするとなると、その経済的損失は計り知れません。そうならないためにも、経済や外交(観光含む)などによって両国の関係を構築し、ソフトパワーによっても抑止力を高めていかなければならないのです。

 

 

明治の開国以降、もっとさかのぼれば元の襲来(元寇)以来、日本は他国から侵略されたことはありませんし、現在直接の軍事的な脅威に晒されているわけではありません。しかしアメリカでの次期大統領候補の予備選挙を見ると、共和党候補のドナルド・トランプ氏が「在日米軍の撤退もありうる」という発言をしています。

 

 

全面撤退となると、その空いた軍事力を日本一国で賄うのか、それとも新たな同盟関係を築くのか、何かしらの安全保障政策のへ改革が行われるはずです。冒頭で書いた通り、国際情勢は常に変化するものであり、国家崩壊やなど、何が起こってもおかしくはありません。憲法もそうですが、一度ゼロベースであらゆることをシミュレーションしてみることが必要だと思うのです。

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。

 

*当ブログでもし自衛隊の秘密事項に関する記述がありましたらご連絡ください。早急に削除いたします。

高卒で可処分所得15万円/月

うわっ・・・自衛官の月収、

低すぎ・・・?

 

そう思った方、タイトルをよく見てください。

月収ではなく、「可処分」所得です。

 

つまり額面から源泉徴収される所得税や年金、保険などを差し引いた、個人が自由に使えるお金の事です。

 

ご存知の方もいるかと思いますが、自衛隊は食費(勤務日)、居住費、水道・ガス代がかかりません(電気代はかかる!)。一般の企業や公務員でも実家暮らしならばこれと同様かもしれませんが、一人暮らしと比較するとその高待遇っぷりを理解できると思います。

 

私の場合ですと、都内に住んでいた頃は居住費7万円/月(間取り1K )、食費は2万くらいで、水道・ガス代は5千円かかっていました。手取り21万円の半分近くは勝手に消えていく感覚です。

 

 

そのお金はどこに消えてしまうのか?

教育期間が終わり部隊に配置されると、ほぼ確実に先輩と同部屋になります。確かに怖い先輩もいますが、教官ほどではありません。それに先輩・後輩の関係とはいえ「同居人」ですので、先輩としても出来れば良い関係を築きたいはずです。そんな時に役立つのが、過去記事で紹介した「お酒」です。

motoji-career.hatenablog.com

 

昔ほどではないにしろ、民間でも飲みニケーションはいまだ健在のようですし、自衛隊も例外ではありません。寝食をともにし、杯を酌み交わすことで、強固な信頼関係が結ばれるのでしょう。

 

ただ、血気盛んな自衛官が男だらけの飲み会で満足できるはずがありません。不思議なことに駐屯地の近くには必ず歓楽街がありますので、朝までハシゴなんて事もしばしばです。自衛隊の地域経済と雇用創出への貢献度は本当に計り知れません(笑)。

 

 

そしてオシャレにも気を使います。平日は迷彩服とジャージくらいしか着ないため、休日だけがファッションを楽しむ唯一の機会でもあるのです。漫画ライジングサンでも描かれていましたが、教育期間中の坊主頭を隠すために、多くの新隊員は帽子を購入します。私も自衛隊に入る時に約10年ぶりに頭を丸めましたが、「髪型もファッションの一部である」ということに改めて気付かされました。当然、部隊でも「品位のある髪型」でなければならないので、衣服や装飾品によって理想のファッションとの乖離を埋める必要があるのです。

 

 

このブログを書いている2016年4月10日現在、バドミントンの桃田選手らによる違法カジノ店での賭博問題がメディアで取り沙汰されています。アスリートは勝負事が好き、というのはこの一件に限らず多くの方も感じていることだと思います。そして残念ながら、準アスリートのような自衛官も、余暇をパチンコやスマホゲーム(有料課金)に費やしている人が多いのが実感です。これらを否定する気はありませんが、費やしたもの(お金と時間)に対して、あまりにもリターンが少ないように思えます。本人が満足しているならば良いのですが、暇つぶしにやっている程度ならば他の趣味に目を向けてみることを強くお勧めします。

 

 

 ちなみにですが、私の同期であった今の20歳前後(ポストゆとり・さとり世代)は割と贅沢志向が強いと感じました。それは先ほどの桃田選手しかり、彼らが熱狂する三代目J Soul Brothers、リムジンを貸切で使ってみたりと、今までの「大人しい若者像」の範疇を超えた嗜好であるように思えたからです。マーケティング評論家の原田曜平氏も指摘しているように、彼らの親世代は20歳前後でバブルを経験してますので、その辺も影響を与えているものと思われます。

 

 

コツコツ自分に投資すべき!

先ほどは若年自衛官の豪遊っぷりを書きましたが、実際にはほとんどの人が定額積み立てをやっています。しっかりした教育隊では、入隊してすぐに始めるよう指導があるみたいです。金額は人それぞれですが、将来の結婚資金やマイホームの頭金など、まとまったお金が必要な時は必ず来ます。その時に、「やってて良かったぁ」と思えるこの仕組みは自衛官にピッタリだと思いました。

 

 また、お金の使い方という点では、ある営内陸曹の人は一眼レフカメラを趣味としていて、1台20万円以上するフルサイズ機を所有していました。他にも高級ロードバイクやオーディオ機器、トレーニング器機など、個人の趣味にお金をかける人も少数ながらいました。そのような人は、私の先入観もあるかもしれませんが、とても魅力的に映りました。多くが刹那的な快楽を求める中、コツコツとお金を貯め、本当に自分が欲しいものを買うという当たり前。モノでなくても構いません。陸士のうちにコツコツとお金を貯め、医学部へ進学したという話を聞いたことがあります。これは極端な例かもしれませんが、可能なのです。

 

可処分所得15万円/月は、一人暮らしのサラリーマンだと手取り25万くらいに相当するはずです。なぜ自分はそれだけの金額をもらえているのか。そのことを少しでも考えてもらいたいのです。

 

 

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