自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

国旗に敬礼するということ

いきなりですが、皆さんは国旗に対して敬礼したことはありますか?

 

学校の正式な行事やスポーツの国際試合などでは、国旗の掲揚や国歌斉唱時に起立をし、脱帽するかと思いますが、国旗に対して敬礼をするということはまずないと思います。事実、私も自衛隊に入るまで、いわゆる「敬礼」はしたことがありませんでした。

 

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引用元:陸上自衛隊Flickr

 

 

敬礼といえば軍隊の象徴。私も自衛隊に入って以降多くの友人に「敬礼してよ!」と言われました。新隊員として入隊後、毎日何十回と行った敬礼ですが、改めてその意義について考えてみたいと思います。

 

敬礼とは相手に敬意を表すこと 

wikipediaを開くまでもないですが、敬礼とは読んで字のごとく、相手を敬う礼(=挨拶)のことです。敬礼と聞いてイメージするのは、上の写真のように右手を斜めに振り上げるものだと思います。これは挙手の敬礼といい、帽子をかぶっている時に行います。自衛隊では自分より階級が上の人に会った時には必ず敬礼をします。そして敬礼を受けたものは答礼をすることになっています。(動作は全く同じです)

 

敬礼は基本的には下位の者が上位のもに対して行うので、私が自衛隊にいた2年間はほとんど自分から敬礼していました。ちなみに後輩が入ってくると、そこで初めて相手から敬礼されることを経験するので、ちょっとぎこちない答礼になったりします。

 

敬礼は上下関係の象徴

先ほど敬礼は相手に敬意を表すことだと書きました。もちろんその通りなのですが、私は自衛隊生活を通して、敬礼とは上下関係を明らかにするものの象徴だと思いました。自衛隊は階級社会です。どんなに能力があり優秀であっても、その時の階級に応じた職責しか与えられませんし、下位の者は上位の者の命令に従います。(上官の命令に服従する義務)そしてその階級は制服や迷彩服を着ている時には容易に認識できるものですが、常日頃から上位者に対し敬礼を行うことで、上下関係の意識をさらに強めているのだと思いました。

 

 

 

0815と1700は国旗に対する敬礼

ここで本題である国旗に対する敬礼について考えていきたいと思います。

 

陸上自衛隊の駐屯地では、上記の時間にそれぞれ国旗の掲揚・降下が行われます。駐屯地中にラッパが響き渡るので、作業中であってもすぐに気付きます。そして国旗が見える場合には挙手の敬礼、見えない場合は国旗がある方向に正対し、直立不動の姿勢をとります。入隊してすぐの頃、教育隊長の号令のもとで国旗に正対し、敬礼をした私はこんなことを考えていました。

 

 

「本当に自衛隊に入ったんだなぁ」

 

 

心地よいラッパのメロディに合わせて悠然とはためく日の丸。私と同様、ほとんどすべての新隊員が、この時初めて国旗に敬礼をしたと思います。そして、それぞれ思うところがあったでしょう。ちなみに入隊して数週間もすると、この国旗に対する敬礼も日常の一部に取り込まれ、特別な感情は抱かなくなりました。そしてこの頃から私は、「国旗に対する敬礼」に様々な考えを巡らせるようになりました。

 

 例えばこのような「儀式」はいつ頃から行われていたのか?

 

日本をはじめ、多くの国は1つの国民に対して1つの国家という国民国家の統治体制をとっています。その歴史は、思想家の内田樹氏によると1648年のウェストファリア条約に遡ると言います。(国民国家とグローバル資本主義について (内田樹の研究室)

それと同時期に船舶の所属を示す商船旗が用いられ、軍艦旗、国旗へと変化していったようです。つまり自衛隊のような国民国家の軍事組織が国家の象徴である国旗に敬礼をするようになったのは、どう長く見積もっても400年にも満たない歴史しかないのです。

 

毎日当たり前のように行っていた国旗への敬礼も、人類の歴史を20万年とすると、つい最近始まったことなんだと今になって実感します。今後のグローバル化により、もしかしたら現在のような国民国家という体制は終わりを迎えるかもしれません。その時が今よりも平和であることを願い、今、私はこうして自身の過去を振り返っています。 

 

 

お読みいただきありがとうございます。

 

 

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