自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

自衛隊の飯①日常編

 

「自衛隊では飯を食った数で偉さが決まる」

 

 そう語ったのは私が部隊に配置された時の営内班長でした。換言すると、自衛隊は階級社会ではあるものの一般の会社や公務員のように年功序列の風潮が根強い、ということになります。それを「飯を食った数」で言い表しているところに自衛隊らしさが出ていますが、振り返れば、自衛隊生活は飯に始まり、飯に終わると言えるかもしれません。私は2年間を営内で過ごし、その分の飯を食ってきましたが、いろいろと思い出すことがあります。今回はその中でも①日常編として、駐屯地の食堂でのことを中心に書きたいと思います。

 

 

自衛官の食事内容

 

 営内に居住する自衛官であれば、朝・昼・夕と13食を食堂で摂ります。これは新隊員であれ、ベテランの陸曹であれ同様です(ちなみに幹部は営内に居住することはできません)。気になる食事内容ですが、基本的には1割程度の麦飯が入った白米を中心に、肉もしくは魚を使用した主菜、それに味噌汁と副菜が1~2品ほど付く、極めて日本的なものです。ちなみに私が自衛隊生活の大半を過ごした某駐屯地の管理栄養士の方によると、陸上自衛隊では肉よりも魚の方が献立に多く使用されているようです。週に何回かはうどんやスパゲッティなどの麺類が登場し、この日はご飯派ではない営内者のテンションが上がります。そして私が自衛隊生活を送った2つの駐屯地では、毎週金曜日の昼がカレーライスでした。金曜日のカレーは海上自衛隊だけかと思いきや、陸上で生活する私たちも一緒の食事を摂ることに妙な一体感を覚えたものです。ちなみに私の知る限りカレーライスが嫌いな日本人はプロ野球の元巨人・元木大介氏くらいなので、この日は誰もが昼食を楽しみにしていました。もちろん週末休暇直前ということもありますが。

 

 

「いただきます」と「ごちそうさまでした」

 

 漫画『ライジングサン』には、自衛官候補生たちが牛丼屋で食事をする際、大きな声で「いただきます!」と言っている姿が描かれていました。それにつられて食事を終えたばかりの一般のお客さんも小さく「ごちそうさま」と言っており、なんだかほっこりするシーンでした。

 

 駐屯地の食堂において、新隊員及び陸曹候補生は各班でまとまって食事を摂ります。全員がテーブルに着いたところで、班員の一人が「姿勢を正して!」と音頭を取り、その後全員で「いただきます!!」と食堂中に響き渡るほど大きな声を出します。一般の隊員も何人かのグループでまとまって食事をとりますが、大きな声でないにしても決まって「いただきます」と「ごちそうさまでした」は言っていました。やはり皆、教育隊にいた頃の習慣が抜けないのでしょう。しかしもっと言えば小学校や中学校でも給食の時には必ず「いただきます」と「ごちそうさまでした」は言っていた覚えがあります。高校や大学、ましてや社会人になると一人で食事をとることが増え、さらに仕事をするとなるとこのようなことにまで気を配っていられないのかもしれません。

 

 話は脱線しますが、この「いただきます」という言葉には食べ物そのもに対するものと、それに関わった人に対する2つの感謝の意味が込められています。そして日本の食文化では箸は必ず横に置きます。これは神聖な食べ物と汚れた人間の世界を分かつ境界線を意味しており、「いただきます」と手をあわせるのはその境界線を越える儀式であるというのです。韓国や中国でも箸を使う文化はありますが、箸は垂直に置かれています。

 

 

We are what we eat.

 

 日本語に訳すと、私たちの体は、私たちが食べたものでできている、という意味になります。このフレーズを調べたらどうやらアメリカのことわざらしいので英文で記しましたが、とても彼らが作り出した言葉とは思えませんね(笑)。それはさておき、感覚的にも論理的にもこの言葉はその通りだという印象です。

 

 私が自衛隊に入る前に都内でサラリーマンをしていたことは既に何度か述べましたが、入隊してからゴールデンウィークまでの期間で3キロほど体重が増加しました。サラリーマン時代は勤務の大半を椅子に座って過ごしていたのと対照に、自衛官候補生過程ではアスリート並みにカロリーを消費します。それでもなぜ体重が増えたかというと、やはり食事と運動だと私は思います。駐屯地の食堂メニューを毎回食べれば訓練に必要なカロリーは十分に摂取できますし、訓練の中で行われる腕立て伏せをはじめとした体力錬成は筋肉を肥大化させます。

 

*ちなみに戦闘訓練が始まってからは再び体重が減少に転じました。理由はお察しください。

 

 

 体が資本とはよく言ったものですが、これはまさに自衛官のための言葉と言っても過言ではないでしょう。事実、栄養バランスに気を使う隊員は多く見られましたし、プロテインやサプリメントを摂取するものも珍しくありません。自衛隊は健康な体でないと務まらない職業だと私は思います。そして有事の際に即応できるために、営内に居住する者には3度の食事が与えられているのだと思います。

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。

 

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