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自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

銃の重さ

 自衛隊に入って最も衝撃的だったことは、やはり本物の銃を目にした時だったと思います。陸上自衛隊では入隊して1週間程経った頃、各隊員に1丁ずつ貸与されます。それまで延々と反復演練してきた敬礼や行進もさることながら、銃授与式では今までとは違う世界に足を踏み入れてしまったことを感じさせます。今回は武力の象徴とも言える「銃」について考えいきたいと思います。

 

銃=バディ

 教育隊で銃が貸与された時、班長からは自分の銃に名前をつけるように言われました。私はこの指示を聞いた時、「そんばバカバカしいことできるか」と内心思ったのですが、考えてみれば兵士にとって銃とは、自らの命を守ってくれる唯一の道具です。そして銃は教育期間中だけに留まらず、部隊に配属された後も必ず使い続けるものです。「銃に愛着を持つ」というと変な感じがしますが、逆に銃に対して余計な感情を抱いていると、身につくものも身につきません。新隊員を指導する班長は、限られた時間の中で銃の取り扱いや分解・結合、さらには射撃まで教えなければならない為、1日でも早く銃に慣れて欲しかったのでしょう。私の周囲の隊員たちは彼女の名前や好きなアイドルの名前などをつけて、ちょっと誇らしげな表情を浮かべていました。

 

 そんな銃ですが毎日のように触れたり担いだりしていると、あっという間に珍しいものではなくなります。むしろ射撃予習と言われる訓練では連日のように銃を扱うので、完全に銃が日常の一部になると言ってもいいでしょう。3.5kgという物理的な重さならば銃を持ったことがない人でもわかると思いますが、銃を持つことの心理的な重さはやはり実際に手にしたことがある人しか解り得ないと思います。しかしそれを言ってしまえばこのブログの意味がなくなってしまうので、拙い文章ですが私なりに言葉で説明してみたいと思います。

 

銃とは何か

 漫画『ライジングサン』では、「銃は人を殺す以外の使い道などない」という衝撃的な言葉が登場します。これは銃授与式の中で教育隊長が新隊員に対して述べたものですが、見事に本質を突いていると思いました。有史以来、人間は争いを繰り返し、古代のチャリオットから現代の核に至るまで多種多様な武器を「発明」してきました。その中でも銃は個人が高い殺傷能力を持ったという点で歴史の大きな転換点になったと思います。

 

 平和な日本においては、街中で銃を見るということはまずありませんが、フィリピンやアメリカ合衆国といった治安の悪い国、あるいは銃社会の国々では、銃を携えた兵士・ガードは日常的に見ることができます。一般的な日本人の感覚からすると、銃=危険という思考が簡単に成立しますが、上記の国々では銃があるからこそ平和が維持される、という考えもあるようです。実際フィリピンを訪問した時には、「銃を持ったガードがいることで安心して買い物ができる」という話も聞きました。また、近年発生してるテロにより、フランスやドイツなどでも銃を持った兵士を街中で見かけるようになりました。日本では自衛隊が実弾の入った銃を持って街中に出るということはまず考えられませんが、防衛出動や治安出動が法律で定められている以上、決してあり得なくはない、ということを覚えておいても良いでしょう。

 

銃と向き合う

 私は陸上自衛隊に入るまでは本物の銃を見たことがありませんでした。しかし教育が終わり、部隊での訓練・射撃、更には警衛などで何回も銃を取り扱ううち、だんだんと緊張感が薄れていったことは事実です。しかし厳重に施錠された武器庫を見る度に、その中に入っているものの重さを確認させられるのです。また、銃は陸上自衛隊の各隊員に貸与される装備の中では最も高額なものだと思います。部品一つ無くなっただけでも銃としては使い物にならないのですから、分解・結合の時には特に神経を使ったのを覚えています。

 

 自衛隊を退職するにあたり、戦闘服や装具と合わせて銃も返納するのですが、この時の正直な気持ちは「ホッとした」というものです。任期満了退職であればそれほど自衛隊に未練はないと思うので、数年ぶりの自由な生活に戻れることの喜びが大きいのだと思います。しかし私は任期満了退職であったものの、自由への喜びよりも銃を手放せたことの安心感が大きかったのです。銃を持つたびに感じていた緊張感と、有事の際には自分が引き金を引くかもしれないという可能性。私は物事を深刻に考えてしまいがちなので、このような感情を抱いたのかもしれません。しかし現実問題として、この世界に無数の武器が存在している限り、私たちは武器について考える、あるいは知る必要があるでしょう。そういった点では、私が銃に触れた2年間は意味のあるものだったと確信しています。

 

参考:89式5.56mm小銃(陸上自衛隊HP)

陸上自衛隊:火器・弾薬

 

  

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