自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

人生を変える3ヶ月

 一体何の広告だと思った方もいるかもしれません。しかし自衛隊生活、特に自衛官候補生課程を振り返るにあたり、どうしてもこのフレーズを用いないわけにはいかないと思ったのです。

  

自衛隊に入るということ

 

 一口に自衛隊に入ると言っても、上は幹部候補生から下は自衛官候補生まで、間口は様々です。ここではもっとも試験が簡単で、かつ私が経験した自衛官候補生課程について書いていきます。自衛隊は、組織上は陸・海・空の3つに分かれていますが、入隊にあたっての試験は共通です。私は希望通り陸上自衛隊への入隊になりましたが、各自衛隊の充足状況によっては希望が叶わないこともあります。候補生課程修了後の後期教育及び部隊配属でもそうですが、本人の意思ではなく組織の都合が優先される、ということは、自衛隊を志すに当たって知っておいて損はないでしょう。

 

 

自衛官候補生の頭髪

 

 自衛官候補生としての入隊が決まると、指定の日時に指定の駐屯地へ行くことになります。そこでは各種手続きや身体測定などが行われるのですが、多くの方が予想されているように、即日、頭を丸められます。ここではこの日を惜しむかのように茶髪で入隊してきた強者や、逆に事前に坊主にしてきた用意周到な者がいるなど、それぞれの個性が垣間見える瞬間でもあります。私は中学生以来、実に10年ぶりに坊主にしたのですが、鏡に映る自分の姿があまりにおかしく、思わず笑い出してしまった記憶があります。

 

  この強制坊主ということに異論がある方もいると思いますが、私は経済的な観点からメリットを見出します。それは多くの、いやほとんど全ての新隊員が、休日になると帽子を着用して外出している事実です。20歳前後といえばただでさえ見た目に気を使う年頃ですから、何としても坊主頭は隠したいでしょう。かくいう私も、恥ずかしながらニット帽を新調し、外出していました。ちなみに平成28年度の募集状況を見ると、自衛官候補生及び一般曹候補生陸上自衛隊だけで9,000人以上にのぼります。彼らが入隊する4月前後にこぞってキャップやニット帽を新調するとなると、アパレル業界にとっては無視できない経済効果ではないでしょうか。

 

多彩なバックグラウンド

 

 冗談はさておき、自衛官候補生の内訳について書いていきます。私が入隊して驚いたのは、以前も書きましたが地元出身者の多さです。陸・海・空を問わず、自衛隊は全国勤務というのが前提条件にあるのですが、私が教育を受けた某駐屯地では、私を除くほぼ全員が県内出身、あるいは県内の学校に通っていたのです。入隊前に何をしていたかを聞くと、半数近くは現役の高校生、そして残りの半数が専門学校生・大学生・社会人が同じような比率で占めていました。社会人経験者の中には、私のようにサラリーマンをしていたもの、工事現場でバリバリの肉体労働をしていたものなど、業界は様々でした。しかし入隊直前まで学生であったか社会人であったかに関係なく、自衛隊に入ったことで職業が変わったことに違いはありません。そして住む所が駐屯地の中という非日常的な場所に変わったことも。

 

人生を変える、とは

 

 私が以前読んだある自己啓発本によると、手っ取り早く人生を変えるには次の3つが有効だとあります。

 

1. 見た目を変える 

2. 住む場所を変える

3. 仕事を変える

 

  一つ目の見た目を変えることは、簡単なところだと服装や髪型を変えることが当てはまるでしょう。イメチェンなどと言って気軽にできることですが、ちょっと勇気がいることもあります。見た目を変えることの究極は整形なのでしょうが、実際に整形した人は性格まで変わってしまうこともあるといいますから、見た目の影響は侮れません。

 

 二つ目の住む場所はどうでしょうか。見た目よりもやや難易度は高いですが、ある程度のお金があれば、実家暮らしをやめて一人暮らしをする、といったこともできそうです。また、住む場所を変えれば当然、普段目にするものも変化するはずです。利用する店や交通手段も変わるでしょうし、何かと人生に変化が起きそうです。

 

 最後の仕事を変えることは、私がまさにそうですし、就職や転職を経験した人ならば理解できることだと思います。1日に占めるに仕事の時間はあまりに多く、中にはプライベートの人間関係も仕事上の繋がりが中心、という人もいるかと思います。しかし転職や退職でその仕事から離れれば、それまでの関係が嘘のように変化します。退職届という紙切れ一枚ですが、実行するにはそれなりの準備・覚悟が必要でしょう。

 

習慣の力

 

 ここまでで、なぜ今回のタイトルが人生を変える3ヶ月なのか、お分りいただけたと思います。それは自衛隊に入る(自衛官候補生になる)ということは、半強制的に見た目が変わり(もともと坊主の人は除く)、住む場所が変わり、仕事が変わることなのです。その仕事内容も、入隊前に同じようなことをやっていたという人はほとんどいないのではないでしょうか。候補生課程ではラッパでの起床に始まり、毎日の清掃、体力錬成、そして赤の他人との共同生活に終始します。私の知る限り、これともっとも近い環境は刑務所ではないかと思うのです。私は元ライブドア社長の堀江貴文氏による一連の著書を読んだのですが、決まった時間に決まったことをする、という点ではまさに同じだと思いました。

 

 約3ヶ月に渡る自衛官候補生。確かにそれまでの生活とは一変しますが、これはきっかけに過ぎないと私は考えています。自衛官に必要な技能や知識はもちろんですが、候補生が何よりも学ばなければならないことは、自衛官としての心構えです。この3ヶ月という時間は、上述した新しい習慣と自衛官としての心構えを体で覚えるための最低限必要な時間なのではないかと思うのです。

 

 

お読みいただきありがとうございます。

 

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