自衛隊で何を学ぶか

元脱サラ自衛官の気づき

徴兵制について

最近、自衛隊のある募集チラシに対して、「経済的徴兵だ!」と声を上げている人がいます。このことをタイトルにした書籍も出版されているくらいですから、もしかしたら皆さんも聞いたことがあるかもしれません。現在、日本は徴兵制を敷いていませんが、今後も絶対ないとは言い切れません。国際情勢は常に変化するものですし、日本のように資源がない小さな島国は、大国の力関係に影響を受けざるを得ないからです。

 

今日は各国の徴兵制度を紹介しつつ、日本における徴兵制について考えてみたいと思います。

 

今なお徴兵制が行なわれている国々

2つの世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、そして冷戦。20世紀はまさに戦争の世紀と言えるでしょう。21世紀に入ると冷戦のほとぼりも冷め、フランスやドイツなど多くの国で徴兵制が廃止されました。では今なお徴兵制が敷かれている国はどこでしょうか?

 

代表的なところだと、日本のお隣朝鮮半島。韓国北朝鮮はまだ「休戦中」の状態であり、北緯38度の軍事境界線では南北のにらみ合いが続いています。韓流スターが韓国軍に入隊する時には日本でも報道されたりするので、割と有名だと思います。あとはヨーロッパだとスイス、オーストリア、ノルウェー、フィンランド、ウクライナ。この国々はヨーロッパの中央から北部に位置し、歴史的にドイツやロシアなどの国からの侵略を受けています。そのロシア中国といった大国、さらには台湾もと、日本の周辺国にはやたらと徴兵制実施国が多いようです。

 

ザックリまとめると、今まさに緊張状態にある国過去に侵略されたことのある小国で、現在も徴兵制が残っているようです。

 

 

徴兵制の意義

徴兵制に対しては様々な意見があります。先ほど紹介したスイスでは、外敵からの侵略可能性の低下と兵器の近代化を根拠に、徴兵制の廃止を問う国民投票が2回行われましたが2回とも否決されています。徴兵制支持を主張する意見を見ると、経済的効果や軍事的効率性を求める志願制(=職業軍人化)にすると、スイスのNATO加入(=永世中立国の破棄)につながるという政治的なものもが目を引きます。今は他国の脅威はなくとも、何かあった時には国民皆兵を敷き、国を守り抜くという考えが広く受け入れられているのでしょう。

参考:2013年、スイス国民はなぜ徴兵制の存続を決めたのか?: 極東ブログ

 

 

シンガポールの場合はどうでしょうか。マレー半島の最南端に位置し、国土面積は東京23区ほどしかないこの小さな都市国家も実は徴兵制を敷いています。近年、圧倒的な経済成長を見せていて、一見他国からの軍事的脅威からは無縁と思われがちですが、なにぶん小さな国ですので、常に他国からの侵略には備えているようです。シンガポールの徴兵制について調べるうちに、興味深い意見を見つけましたのでリンクを貼っておきます。

参考:絶頂期にあって苦悩するシンガポール 30年でGDP13倍!しかし国民の結束意識が懸念 ts

 

国家を形成する「個人」を、軍隊で鍛えようとしているのですね。記事の中にもある通り、富裕層の子息から貧困層出身者まで、軍隊では様々な階層の男子が共同生活と訓練を行います。自らを鍛え、視野を広げるという点では、シンガポールの徴兵制は国防以外の面でも大いに効果を発揮しているのではないでしょうか。

 

 

日本における徴兵制 

 

ここまで海外の例を紹介してきましたが、いよいよ日本について考えてみます。まずはその前提となる日本の安全保障環境。これは防衛白書にも明記されている通り、日米安全保障条約を基軸としていて、沖縄県を中心に国内にいくつもの米軍基地が存在しています。また、日本国憲法では軍隊の不保持を謳っていますが、日本には陸・海・空それぞれに自衛隊が存在します。海外メディアで自衛隊が紹介される時にはJapan Armyと言った記述が一般ですので、諸外国からは軍隊という認識なのでしょう。また、日本が戦争に巻き込まれないための「抑止力」という観点では、世界最大の軍事力を誇る米軍基地が日本にいくつも存在し、「アメリカの核の傘」の下にあることを理解する必要があります。

 

それらを踏まえて、日本に今、徴兵制が必要かと問われたらそれはノーということになるでしょう。

 

日本に対しては中国漁船によるによる挑発的行為もありますが、艦隊や戦闘機による直接的なものではありません。YouTubeへの動画投稿が話題となったように漁船に扮してのものが多く、防衛省・自衛隊でもこれらグレーゾン事態への対処には法整備をしています。そして何より世界第2位と第3位の国が全面的に戦争をするとなると、その経済的損失は計り知れません。そうならないためにも、経済や外交(観光含む)などによって両国の関係を構築し、ソフトパワーによっても抑止力を高めていかなければならないのです。

 

 

明治の開国以降、もっとさかのぼれば元の襲来(元寇)以来、日本は他国から侵略されたことはありませんし、現在直接の軍事的な脅威に晒されているわけではありません。しかしアメリカでの次期大統領候補の予備選挙を見ると、共和党候補のドナルド・トランプ氏が「在日米軍の撤退もありうる」という発言をしています。

 

 

全面撤退となると、その空いた軍事力を日本一国で賄うのか、それとも新たな同盟関係を築くのか、何かしらの安全保障政策のへ改革が行われるはずです。冒頭で書いた通り、国際情勢は常に変化するものであり、国家崩壊やなど、何が起こってもおかしくはありません。憲法もそうですが、一度ゼロベースであらゆることをシミュレーションしてみることが必要だと思うのです。

 

 

 

お読みいただきありがとうございます。

 

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